定常性の定義(弱定常性および強定常性)

2020年6月7日

定常性

同時分布や基本統計量の時間不変性に関する仮定を定常性という。

なお、定常性には弱定常強定常の2つのクラスがあり、何を不変とするかによって分かれます。
ザックリと説明すると、弱定常はモーメント、強定常は分布に着目した仮定です。

研究者などでない限り、基本的には弱定常を仮定することが一般的です。
本サイトでも、定常性といった場合は、特別に注釈がなければ弱定常を意味することとします。

弱定常

\( \{y_t\} \)が弱定常であるとは、期待値・自己共分散が時間差\(k\)のみに依存することをいう。
すなわち、任意の\(t, \, k\)について、\begin{eqnarray*}
E[y_t] &=& \mu \\
Cov(y_t, \, y_{t-k}) &=& E[(y_t – \mu)(y_{t-k} – \mu)] = \gamma_{k}
\end{eqnarray*}が成立する。

「平均が定数」かつ「異時点間の共分散が時間差のみに依存」というのが簡単な説明になります。
「平均が定数」というのは、どのような\(t, \, k\)についても、\( y_t \)と\( y_{t-k} \)の平均は\( \mu \)で一定ということです。

定義より、\( k=0 \)の場合、自己共分散\( \gamma_0 \)は分散\( \sigma^{2}_{y} = Var[y_t] = E[ ( y_{t} – \mu )^2 ] \)に一致します。
また、自己共分散と同様に、自己相関係数\( \rho \)も時間に依存しません。(以下の式変形を参照)

\begin{eqnarray*}
Corr(y_t, \, y_{t-k}) &=& \frac{\gamma_k}{\sqrt{\gamma_0\gamma_0}} \\
&=& \frac{\gamma_k}{\gamma_0} \\
&=& \rho_{k}
\end{eqnarray*}よって、自己相関係数は時間\(t\)に依存せず、時間差\(k\)のみに依存する。

ちなみに、自明ですが\(\gamma_{k} = \gamma_{-k}, \, \rho_{k} = \rho_{-k}\)が成立します。

\begin{eqnarray*}
\gamma_{k} &=& Cov(y_t, \, y_{t-k}) \\
&=& Cov(y_{t-k}, \, y_t) = \gamma_{-k}
\end{eqnarray*}より、\begin{eqnarray*}
\rho_k &=& Corr(y_t, \, y_{t-k}) = \frac{\gamma_k}{\gamma_0} \\
&=& \frac{\gamma_{-k}}{\gamma_0} = Corr(y_{t-k}, \, y_t) \\
&=& \rho_{-k}
\end{eqnarray*}以上より、\(\gamma_{k} = \gamma_{-k}, \, \rho_{k} = \rho_{-k}\)が成立する。

強定常

\( \{y_t\} \)が強定常であるとは、任意の\(t, \, k\)について、\( (y_t,y_{t+1}, \cdots , y_{t+k}) \)の分布が同一であることをいう。

\( (y_{t_1},y_{{t_2}}, \cdots , y_{{t_n}}) \)の同時分布と\( (y_{t_1},y_{{t_2}+1}, \cdots , y_{{t_n}+k}) \)の同時分布が\( \forall n \in \mathbb{N}, \, \forall k \in \mathbb{Z} \)に対して互いに同じ、というと分かりにくいでしょうか。

強定常は弱定常とは異なり、平均や分散が有限である必要はありません。(モーメントの存在を仮定しない。)