5F分析（ファイブフォース分析）の概要【マーケティング】

2020年6月8日

5F分析の定義

マイケル・E・ポーターが産業組織論の考え方に基づき、企業に対して収益をもたらし得る産業構造の特性を抽出し、5F分析として提唱しました。
ポーターは後述する5つの競争要因によって決まる業界の収益性を分析し、最も収益性の高い業界を選択することの重要性を説いています。ここでいう分析が5F分析、選択はポジショニングを示します。

5つの競争要因

5F分析では「新規参入の脅威」「代替品/サービスの脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「既存企業同士の競争」という5つの圧力（ファイブフォース）を検討します。
ちなみに、5Fとはファイブフォース（Five Forces）のイニシャルです。

• 新規参入の脅威
• 代替品/サービスの脅威
• 売り手の交渉力
• 買い手の交渉力
• 既存企業同士の競争

以下でそれぞれの意味を具体的に見ていきましょう。

新規参入の脅威

「新規参入の脅威」とは、潜在的な参入者を含めた新規参入者の数・規模がもたらす脅威を表します。

簡単には、その業界への新規参入が容易であるか、ということです。
新規参入が容易であるほど業界の競争力が高まるため、シェアの獲得が難しくなります。

代替品/サービスの脅威

「代替品/サービスの脅威」とは、ユーザーのニーズを充たす代替品または代替サービスの出現がもたらす脅威を表します。

代替品や代替サービスが存在すると、自社製品/サービスの価格が抑えられてしまう可能性が高まります。
代替品/サービスへの乗り換え障壁が低かったり、既存のものに比べてコストパフォーマンスが高いものが登場したりすることが脅威となり得ます。

売り手の交渉力

「売り手の交渉力」とは、供給業者（仕入先）が及ぼす収益への影響を表します。

製品・サービスの需要が大きい、あるいは人気製品・サービスが独占状態で提供されている場合、売り手の交渉力が強まることで、供給コストが高まります。

買い手の交渉力

「買い手の交渉力」とは、顧客が及ぼす収益への影響を表します。

製品・サービスの需要が小さい、あるいは製品・サービスが供給過多で提供されている場合、買い手が自分に優位な価格を提示できるため、利益を得ることが難しくなります。

既存企業同士の競争

「既存企業同士の競争」とは、業界での既存企業間の競合関係を表します。

既存企業間の競合状況の程度が激しい場合、様々な面において競合他社との競争が迫られることから、収益の減少に繋がる可能性があります。

5F分析の考え方

5F分析では、先に挙げた5つの競争要因について、まずそれぞれの要因の中で多くの要素を洗い出し、業界内の脅威（各要因）についてどの程度高いかを判断します。
そして、それぞれの要因で得た脅威の程度を総合的に検討することで、業界への参入が魅力的かどうかを分析します。

例

5つの競争要因	要素	脅威の程度
新規参入の脅威	市場の参入障壁 参入コスト …	高or中or低
代替品/サービスの脅威	スイッチングコスト コスパの向上 …	高or中or低
売り手の交渉力	売り手の数 代替サプライヤー …	高or中or低
買い手の交渉力	買い手の数 同様の製品多数存在 …	高or中or低
既存企業同士の競争	シェア争い 撤退障壁 …	高or中or低

これを見ただけでは何のことか理解できないかもしれませんが、5つの競争要因について、まず多くの考えられる視点を持ちます。
次に、各競争要因で得た視点から、その競争要因では業界の脅威の程度を判断します。
そして最後に、ここで得られた5種類の脅威の程度から、総合的に見て、その業界に参入することが魅力的かどうかを分析します。

5F分析のデメリット

5F分析には、主に2つのデメリットが存在します。
それは、「現代に合わない」ことと「企業単位での分析ができない」ことです。

現代に合わない

言うまでもなく、現代の業界構造は流動的で、多角化・複雑化してきています。
特に、ITの発達による影響が顕著で、従来の考えではあり得なかった業界進出が多く見られます。
このため、5F分析をする際は、潜在的な競合企業を見極める必要があります。

企業単位での分析ができない

5F分析はその特徴として、業界単位での分析を行います。
しかし、これは業界より細かな単位、つまり企業単位での分析ができないことを意味します。

これを解決するためには、5F分析だけでなく、より多くの手法を組み合わせて用いる必要があります。